57-6 住まいの「動線」 動線の「次元性」とは?
動線の次元性とは?
「動線の次元性」と言うと、少し難しい言い方に聞こえるかもしれません。
「次元性」を端的に言えば、将来性のことではありますが、家に関わる「動線の次元性」を論じるうえでは、単に将来性と言うだけでは言葉が足りず、補う説明が必要かと思います。
住まいの「動線」・ノート一覧
57-1 住まいの長持ちは「動線」で決まる?!
57-2 住住まいの「動線」検討は「知覚価値」を高める起源
57-3-1 住まいの「動線」 分類と解釈
57-3-2 住まいの「動線」「生活動線」は動線の総称
57-3-3 住まいの「動線」 「家事動線」は特別な動線
57-3-4 住まいの「動線」 「来客動線」は特別な動線
57-4 住まいの「動線」「作業動線」とは?
57-5 住まいの「動線」「視聴嗅動線」とは?
57-6 住まいの「動線」 動線の「次元性」とは?
モノを買ったり所有したりする際には、誰でも必然的にその使い勝手や将来性にも目を配り、「役立ち」度合や「寿命」「長持ち」といったことを気にします。
その支払うべく対価や価値を認めるためにも、使い勝手を含めた将来性に気が回り、個人が手にする一番の高額財産と言える住まいにおいてはなおのこと、考慮がなされているはずです。
なぜモノの将来性に気が回り考慮がなされるのかと言えば、モノを取得するために要した努力や苦労といった労力としての要素が、モノとして役立つ時間や期間といった要素と比較され、優劣の判断を促すからです。
ところが、必然であるはずの将来性の考察は何処へやら、我が国の家の平均存続期間は30余年で、短命に取壊されてしまっているのです。
当然に、築30余年が家の「寿命」であるわけもなく、「長持ち」に値する期間でもなく、他の先進諸外国との比較でも、群を抜いて短命に処分されているのが現状です。
住まいが30余年で取壊されてしまっている現状は、「将来性は考えたのか。」「モノを大切にする国民性ではないのか。」と、疑問だけではなく、世界的に資源問題が取り沙汰されるうえでは、日本人の恥とさえも感じてしまいます。
一方で、日本の家が短命に取り扱われている数々のデーターを公明に視てみると、日本の家の短命化には、モノとしての将来性によらず、ヒトの将来性が基軸として関係していることに気が付きます。
家の命における「次元性」には、住む人の変化による「動線の変化」という使い勝手の評価としての「ヒトの思考」が根深く起因しているのです。
際立って驚異に感じられるのは、ヒトの加齢や老化が起因して生じる「動線」の悪化への評価で、これを解消する為の改築行為やその費用が取壊しの事由として鎮座していることです。
家の「動線」の評価は、ヒトの必然的変化に帰属するので、本来ならば「動線の次元性」としての連鎖が想定できる範囲にあります。
家の財産性やその在り方を思えば、「動線の次元性」を見据えた住まいへの「心」を持ち続けるべきです。
この「心」の持ち続けは、住まいへの「知覚価値」を高く維持する「心持ち」という意味にもなります。
「動線の次元性」としての「心持ち」を得るには、始めが肝心であると言えますが、そう難しいことではありません。
「心持ち」を得るための「動線の次元性」の熟考による記憶、すなわち「エピソードづくり」が、将来の変化を想定内に捉えさせてくれて「住みやすさ」に左右するのです。
熟考する物理的「動線」の評価の良し悪しに関わらず、精神的価値である「知覚価値」としての「心持ち」が得られ、その熟考の経験が「エピソード」として残る限り、リセットする引き金を引くようなことはないのです。
動線の三つの次元性
住まいの「使い勝手の良さ」を末永く維持するうえでは、動線の将来性である「次元性」の熟考が肝要です。
動線は、その良し悪しの「心持ち」に影響し、「心」から来る「住みやすさ」を左右させるので、熟考による記憶としての「エピソードづくり」が重要であるとこれまでに述べました。
動線の「次元性」を具体的に考えるためには、住む人の将来を想像する必要があります。
住む人の将来とは、数値的な年数だけではなく、住む人それぞれの成長や加齢、往生といった想像可能な範囲での未来に及びます。
ヒトは否応無しに、成長、加齢、往生、といった変化をもたらします。
誰もが持ち合わせている現象です。
子供であれば、背丈が大きくなり精神面も大人に向います。
大人も成長すると言えますが、老いが待ち受けていることは否めませんし、やがては往生となります。
一方モノとしての家は、経年劣化や損傷があっても、手入れを行うことで元の状態に近づけることが出来ますが、ヒトの様に否応無しに進む成長や老いという現象とは異質なことで、むしろ、自分達の成長や加齢、往生に合せた家の変化を企てることが必要になると言えます。
家の将来性の面で言うと、住まいを考え始める時に家族の将来構成を踏まえた考慮が必要だということです。
もっと言えば、子供の成長や巣立ち、老いや往生という現象はいずれ生じると分かり切ったことであり、これによる変化は、住まいを考える段階には想定範囲内であるはずなのです。
人生100年時代と言われる現代において、個人が手にする一番の高額財産である代物の価値を重んじるうえでは、「住みにくい」ことを事由に30余年で取り壊すことは道理にはならないのです。
「動線の次元性」は、ヒトの成長、加齢、往生、といった変化に起因することからも、その熟考にはいくつかのステージに分けて評価検討することが望ましいと言えます。
大まかには、現在と未来の二つに分けられますが、本来家の寿命はヒトよりも長いものであるので、三つ目のステージが存在します。
⇒挿絵 動線の次元性 一次的、二次的、三次的
住まいの「動線の次元性」は3つの区分に区分けして説明することが出来る
・一次的:「想定期」近未来を含む現在
・二次的:「想定期/想像期」将来(ある程度予想できる未来)
・三次的:「想像期」子息への相続や贈与、第三者への売却。(予想の範囲外の未来)
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