57-2 住まいの「動線」検討は「知覚価値」を高める起源
住まいの知覚価値を高める「動線」検討
住まいの「間取り」には、夢や希望を出来る限り取込みたいものです。
しかしながら、この夢や希望によらず「敷地」の要素に左右されてしまいがちなのが住まいの「間取り」検討です。
なぜならば、「敷地」には、方位や道路の方角などの物理的現状の他、法律などを基軸とする数々の性格があり、その有効性が「ゾーニング」の検討段階から影響するのです。
住まいの「動線」・ノート一覧
57-1 住まいの長持ちは「動線」で決まる?!
57-2 住住まいの「動線」検討は「知覚価値」を高める起源
57-3-1 住まいの「動線」 分類と解釈
57-3-2 住まいの「動線」「生活動線」は動線の総称
57-3-3 住まいの「動線」 「家事動線」は特別な動線
57-3-4 住まいの「動線」 「来客動線」は特別な動線
57-4 住まいの「動線」「作業動線」とは?
57-5 住まいの「動線」「視聴嗅動線」とは?
57-6 住まいの「動線」 動線の「次元性」とは?
「ゾーニング」とは外構や家の出入り口、部屋、区画などの位置と繋がりの大まかな見立てのことですが、注文者と受注者との間での認識を共有する手段としても、この検討が有効となります。
移動経路等のより具体的な考察段階となる「間取り」検討ではなお、この「敷地」の性格が具体的に関わり、「設計」段階ではこの性格を仕様や構造などに詳細に活かさないとならないのです。
住まいづくりにおいては、人の移動経路や軌跡のことを「動線」と言います。
設計行為の一環である「ゾーニング」や「間取り」の検討を「動線」の検討と置き換えても良いほど、「動線」は「敷地」と住まいとの間で深く関わります。
言い換えますと、「敷地」の性格によって一見では夢や希望から遠ざけられてしまう要素は、「動線」の熟考で払拭方向に導ける可能性があります。
「動線」の熟考が夢や希望のとの真のすり合わせとなり、「間取り」の折り合いがもたらされ、住まいの知覚価値を確たるものにするのです。
「動線」の熟考が導く間取りの可能性(例)
では、「敷地」の性格によって、一見すると夢や希望から遠ざけられてしまう要素が、「動線」の熟考によって払拭されるのはどんな場合でしょうか。
例えば、道路が北側に位置する縦長の敷地で、「玄関と繋がる明るいリビング」を希望するような場合です。
玄関を道路に近い北側に「ゾーニング」することも、リビングを日当たりの良い南側に「ゾーニング」することも、それぞれに「敷地」の性格に対する合理性はありますが、繋がりを持たせたい希望に対して北の玄関と南のリビングは、一見では離れた関係であり矛盾しています。
しかし、その離れた距離の間付近に、収納やクローゼット、トイレなどの元から必要とするような小区画を導入することで、その区画への移動を伴う経路をつくり出し、北玄関と南リビングに繋がりをもたらす場合があるのです。
⇒挿絵 北玄関南リビングの例
例えば、面積の狭い「敷地」で、「可能な限り広い居住空間」を希望する場合です。
建物の中心に配置する階段には、「動線」となる廊下部分が削減でき、その分部屋や区画を広くする働きがあります。
リビングからの階段とすれば廊下は不要になりますし、登り切った位置が2階の中心になっていれば、各区画などへの移動経路が分散できながらも「動線」の短い廊下となります。
挿絵⇒狭い敷地での階段の位置例
省かれる現代の動線検討
末永く住んで行ける住まい選びには、「動線」を意識することが賢明です。
なぜならば、短命な家は使い勝手の評価が低く、住む人の「動線」への不満という思考が「見えない所に潜在している」と分析されるからです。
つまり、どんな家にも建築当初や購入当初の段階に、使い勝手の評価が下がる要素が存在しているはずなのに、多くの場合それに気が付かされていないということです。
昨今ではこの短命要因をくみ取ってか、インターネットの普及も伴い、「動線」というキーワードを見聞きする機会は増えている様ですが、表面的な事だけであまり深堀がなされていないのが現状です。
「見えない所に潜在している」「動線」の不満が、使い勝手の評価を下げ、30余年で取壊されてしまう家々が後を絶たないというのに、なぜ「動線」について深く触れられてはいないのでしょうか。
これを察するに、宅地の狭小化に合わせ実行するべき「動線」検討の欠如が、起因の発端になっていると言えます。
本来ならば、敷地が狭くなればなるほど正義心をもって「住まいには「動線」の検討が重要である」と、その根拠や理論について専門家がしっかりと発すべきところですが、敷地の狭小化は、「動線」に関わる知識の公開や説明をネガティブに捉える専門家を増やしているのです。
このネガティブの要因は、売る側の利益優先思考にあります。
短時間での決着が優先され、説明や理解に時間を要す「動線」よりも、評価の判断が早い部屋数や広さなどの数値的形状要素に意識が向くよう仕向けられ、「動線」というキーワードすら出されない場合があるのです。正しい情報が公にされない不義の社会情勢も伴い、省かれてしまう傾向が強いのでしょう。
30余年で取壊されてしまうことは、個々の財産の確保の観点から視れば、建築や購入当初には望みもしなければ、覚悟もしていなかったはずです。
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